法律の講義は、特に日本ではですけど、分からないことがあるとダメ、分かっていることしか教えない、という大前提があるように思います。そうすると、シンギュラリティ(技術的特異点)という、いわゆるまだ見ぬ世界の話なんて、教えようもないことになりますよね。技術的特異点の具体的なインパクトが分からない以上、法的な話はぜったいにできないのかも。
技術的特異点について不明確なことがあっても、法的な問題はすでに少しずつ起き始めています。自動運転や移動革命の担い手であるドローンはもちろん、契約や労働法の問題はよい例ですね。僕は、今起きている現象を講義の中にできる限り取り込んでいきたいと思っています。法学部では嫌われてしまうかも、ですけど。まだ誰にも解かれていない問題こそ、法学部では本当の意味で法的な思考を問われる重要な問題のはずだからです。
暫定的ではありますが、僕が「シンギュラリティと法」と題して講義をするとしたら、下記のようなシラバスになりますかね。ある大学だと「技術利用と法」、青学だと「法と経済」という講義で扱っている内容を少し修正して話すだけ、なのですけど、意外と皆で楽しめるのではないかな、と思っています。
=====
1.はじめにーなぜ、今シンギュラリティを考えるのか
2.データと法ー自力救済、法的救済、そして「コード」による支 配
3.パーソナルデータの活用が未来を変えるー便利さよりもプライ バシーの保護を優先できる?
4.シンギュラリティとイノベーションーヒトではなくAIがイノ ベーションを定義する時代?
5.シンギュラリティと法形式ー法規制はどうなっていくか、どう あるべきか?
6.シンギュラリティと契約ー契約は本当により合理的な内容にな る?
7.シンギュラリティと知的財産法ーインセンティブを与えられる べき対象は何か?
8. シンギュラリティとコーポレートガバナンスー取締役の義務や役割 はどう変わる?
9. シンギュラリティとワークスタイルー法は労働者を守れるのか、ど う守るべきか?
10.シンギュラリティと弱者保護ー生活保護や社会保障はどう変 わる?再チャレンジは可能なのか?
11.ケーススタディとしての自動運転自動車ー法は技術にタイム リーに追いつけるか?
12.まとめーシンギュラリティと法
=====
実は、この講義は今年、何らかの形で実現できそうだったのですけど、ダメになったのでここに
掲載してしまいました(笑)。誰かが参考にして講義にしてしまうかもしれないし、反面教師に
されるかもしれないですけど、僕は僕なりの講義を、いつか必ずしたいなって思います。
医療と法のゼミでも、シンギュラリティやAIを意識した問題を扱いたいと思います。