2019年1月3日木曜日

正解はないが、最善の一手らしきものはある?!

明けましておめでとうございます。2019年も、どうか宜しくお願い申し上げます。

青学は、箱根駅伝で復路優勝になりましたね。選手の皆さん、本当にお疲れさまでした。
結果は結果ですけど、出雲も全日本も勝っていたわけで、箱根駅伝で勝つのが本当に難しいんだなぁって、観戦しながら教えてもらいました。

授業もゼミも佳境ですけど、僕が大事にしているのは「ライブ感」です。過去の事例をほじくり返して、覚えさせて、試験で書かせるだけっていうのは嫌なので(笑)。

ライブ感っていうのは、「まあ、こんなもんでしょう」という予想を覆し、法理論や事実次第で結論がこんなに変わりうること、結論が変わると世界が相当変化しうること、そのような変化によって人々の生活が変わり、良くなる人も悪くなる人もいること、それらを理解して貰うための仕掛けですね。僕なりの。要は、法的なセンスを磨いているんです。弁護士としてとか関係なく、仕事一般で使えるセンスを。

サッカーのワールドカップで、日本が10分間以上、ボールをキープして決勝に進んだ件について、元監督の岡田さんの話が記事になっていました。

スポニチアネックス「岡ちゃん 代表の10分間ボール回しに持論「負けた人に限って正しいのは…とかって言う」(2019年1月2日), available at https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2019/01/02/kiji/20190102s00002014268000c.html


「・・・僕らの仕事っていうのはある意味答えのないことを決断することでね。ギャンブルと一緒なんですよね。ギャンブルっていうのは勝つか負けるかだけで、どっちが正しいか間違いかじゃないんですよ。負けた人に限って、正しいのはこういう手のはずなんだとかって言うんだよね。だから正しいか間違いかじゃない。西野さんはあの場にいて、決めるのは直感で決めるわけだから、何かを感じてああやって決めて、結果勝ったんだ。それがすべて」

法律を扱う人間にとっては、(弁護士だろうがそうでなかろうが)自分で決断するのではなく、クライアントに決断をさせる、ないし、決断してもらえる環境を作り出すのが仕事。そこには、100パーセント確実な答えはないことが多い。確実じゃないのに決断を迫られるクライアントに、そのあとの事態を予測して見せてあげて、対策案の選択肢もそれぞれ用意してあげる。それらのおかげで、クライアントははじめて決断できるんです。悩みながらも、です。僕らの仕事は、100パーセントの正答率で答えを話すことじゃない。そこに、早く気付くべきじゃないかな。

講義の試験には、必ず、一応の正答が用意されていますけど、それはあくまで一応の正答でしかない。講義で大事なのは、正答を覚えることじゃなく、正答らしきものを見つけ出すプロセスだったり、考え方の方です。

ゼミでは、わざとというかあえて、答えが割れそうな生の事案(まだ判例などで結論が出ていない事案)を選んで議論してきました。答えがない世界では、どのような前提と事実関係の下で、関連法令をどう解釈して出した結論なのか、それが重要です。また、話し方や説明の仕方でも、説得力は変わってきます。たとえば、厚労省のガイドラインは、最終的な法解釈ではなく、必ずしも正しくはない。あくまで、内部解釈指針として、裁判所から参照されるに過ぎない。なぜその法解釈でいいのか、駄目なのか。目の前の事案が一般的なのか、それとも特殊なのか。ガイドラインの前提と本件はどのくらいかけ離れているのか、それともむしろ近いのか。そのような点を気にしながら、プレゼンによって灰色の答えをより白や黒に見せる。そういう技術を、皆さんにはぜひ磨いてほしかったです。

ライブ感を作り出せるのも、2018年度はあと数回。それで、皆さんには、法律問題において必ずしも100パーセントの正解はないが、最善の一手らしきものはある、というか最善の一手らしきものを見つけ、それを最善だと説得できる力を是非手に入れてほしい、そう思います。

2019年は、さらに新しいライブ感を生み出す手法を考えてみたい。ゼミ生や講義に出てくれる皆さんと一緒にです。どうか宜しくお願い申し上げます。