法学部で教えていて時々感じるのは、「こうしておけばよかったのにしていないから、仕方ない。損害賠償支払うしかない。事故や事件が起こる前の対応が大事」、みたいな発言が多いってことです。僕らが分析する事案はすべて、事後(ex post)のもの。起きた後にゆっくり分析しているから、そんなに「のんびりした」、「他人行儀な」発言になります。おっしゃるとおり、準備は足りなかったのかもしれない。でも、どうして準備や事前対策が足りなくなったのだろうかとか、準備や事前対策が足りない形で事件が生じたとき、その場で具体的にどんな対応をすれば訴訟にならなかったのか、自分ならできるのか、できないとしたらそれはなぜか、そこまで突っ込んで考えられない人があまりにも多い。しょせん他人事だから仕方ないんだけど、自分の身に降りかかったらどうします?過去は変えられない。でも、今の時点からは行動で変えられるかもしれない、でしょ。
確かに、法学部ではこれまで、法的責任の有無だけを気にしてきたように思います。ルールに事実を適用し、白か黒か、勝ちか負けか、違法か適法かなどなど、それを覚えて書き出せる、そういう能力ばかり鍛えてきたのかもしれない。過去の事例ならば、暗記力の問題にはなりますけど、100パーセント正しい答えを見つけ出せるかもしれません。
でも、実際の世の中では、法律問題について100パーセント正しい答えなんてそんなにはない。それなのに、あるルールと事実のもとでの白黒を覚えて、実社会で使えるのでしょうか。自分が目新しい問題に遭遇した時に、とっさにどう行動できるのか、その理由はどうしてか、法がどのように影響してくるのか、自分の行動が今回のケースだけじゃなく事後の事案にどのような影響を及ぼすのか、それらを考えられないと、現場では使えないヒトになってしまわないのでしょうか。「法」を振りかざしてみても、そんな知識、過去の判例や学説に寄っているだけ。それらを覚えているだけじゃ仕方ない。それらを今回の事案にどう使ってどう行動するのか、それを考えることにこそ意味がある。裁判で勝てても、市場で負けたらそれこそ最悪です。
Ex anteのことを持ち出すのは、法学部の狡さ。もう事件は起きている。そこでどうするかが、どんな解決策を見つけられるかこそ、腕の見せ所でしょう。事態を悪化させず、少しでも改善させるための方策を見つけ出すために法を学び、使ってほしい。失敗はだれしもします。完全な準備はあり得ない。だからこそ、その場での対応力を法的に磨き上げてほしいのです。
行動なんてAIが教えてくれるっておもってるあなた、AIが行動を支援してくれても、それは最善の回答では実はない。過去の事例から統計的に考えた場合の最善そうな行動を教えてくれるに過ぎない。もちろん、統計って強いみたいですけどね。羽生さんいわく。https://headlines.yahoo.co.jp/ article?a=20190110-00027216-pr esident-soci