2018年5月26日土曜日

違法適法かとか、責任のありなしの先にある世界を見てみない?

法学部に在籍していると、判例や事例を扱って、違法か適法かとか、責任があるのかないのか、原告適格があるのかないのか(訴えの利益の有無を含めて)だけを覚えて終わり、という機会が多いように思います。せいぜい、結論の理由付けくらいは覚えるかもしれないけど、それだと現場ではほとんど使えない知識でしかないです。

まず、最高裁判決を含めて、判例と目の前の事案には必ずと言っていいほど、事実関係の違いがあります。すぐにその違いに気付いて、意味のある違いかそうでないかを理解する必要があります。

もっと大事なのは、そのままだと違法になるなら、どうすれば適法にできるのか、逆に適法な事案なら、どこの事実関係が違うと違法になりうるのかについて、分析して説明できることです。

そもそも、目の前の事案について明確に違法か適法か、責任があるのかないのかを指摘するのは意外に難しいです。そこでは、違法そうな案件についてはできる限り適法に近づけるための方法、プロセス、コンテキストを探求することが重要になります。案件を止めたい側であれば、どこが一番引っかかりそうなのか、事実関係を改めて調べ直した上で違法性を検討し直してみる、という作業が求められます。

要するに、白黒はっきりしてないのが現場なのです。そこで、法学部で習ったように白、黒って騒いでみても意味はぜんぜんないですし、上司にしてみたら「それ、100パーセント確かなの?」って聞き返してそんな意見をすぐに潰すことができます。

007を含むスパイ映画やドラマを見ていると、プランBとかCっていう言葉によく出くわします。適法だと思っていたら違法だから是正しろと言われたらどうするのかを事前に考えておき、すぐに対応可能なようにしておくってことです。ヒトは必ず間違えますし、そもそも法律問題には白黒そんなにはっきり付かないものばかり。そうだとすると、スパイ映画やドラマの世界には学ぶべき事項が多いと思います。

さらに大事なのは、法学部では中立的に裁判官のような目で案件を眺めますけど、そんな場面は現場においてほとんどない、っていうことです。白にしたい、黒にしたいというどちらかの立場で案件を眺める機会の方が大半なのです。そういう場面では、スパイ映画やドラマで言うと「お前の雇い主は誰だ?」ということが最も重要になります。中立的な法解釈ではなく、自分のボスやクライアントにとって最善の利益を実現するために努力することになるわけです。そういう経験、したことないですよね(笑)?バイトで、バイト先のためにって行動してます?多くの人は、お金のために我慢してるだけですよね(笑)。

100パーセント正しい法解釈は極めて難しい前提で言うと、法学部に在籍するだけでは現場で使える法学ってなかなか学べないかもしれませんね。法学部って何のためにあるんだろうって話になりかねないけど。


(Photo taken in Tokyo in May 2018)