法律問題には100点というか、完璧な正解が必ずあると思いますか?現実の世界で起こる法律問題については、100点や完璧な正解が必ずしもない場合の方が普通だと思います。試験で出される仮想の問題と違って、現実の法律問題ではさまざまな制約があり、仮想の世界でベストな解が使えないこともあります。たとえば、お金がないとか、時間が足りないとかいろいろな制約がありますよね。また、一方のクライアントの立場から最善でも、社会全体にとってはぜんぜんよくない解だって当然ありますよね。法律問題については、数学の公式に数字を当てはめれば完璧な答えが導き出せる、というわけにはいかないということです。
講義をしていると、学生の皆さんは法律問題には正解がある前提で、答えを断言的に話すことが多いです。事実関係や前提などの条件をつければ、正解に近いものを見つけることはできますが、ゼロかイチか、というような回答は法律問題にはなじまないかもしれません。
事例に基づいて考えてみましょう。法令解釈が問題になれば、当然ながら、関連する最高裁判決を、最高裁判決がなければ下級審判決を探せばよいのは誰でもわかりますが、裁判例が1件もない場合にはどうすればよいか?法令を所管する行政庁は、ガイドラインの形で内部解釈指針を示していることはありますが、それは究極的なというか、最終の解ではないですね。とりわけ問題なのは、ガイドラインは個別具体的な事案を解決するために作られているわけではないため、ある事案にとっては極めて不利に働くこともあります。その場合、どうしたらよいか、わかりますか?
法律家であれば、上記のように最終の解が示されていなくても、その前提で、一定の法解釈をクライアントに示す必要が出てきます。皆さんが卒業するころには、それができるようになっているといいですね。
ゼミや講義では、法律問題に100点がない前提で、クライアントのために法律を味方にするようなスキルを磨きたいと思っています。