『法学入門』は素晴らしい。崇高な法学の理念、法を学ぶ意義を説く。僕も学部生のころは、そんな理想に胸を躍らせた。でも、実際には、その理想は学部1年生のころに打ち砕かれてしまう。
「人類の幸福と世界の平和のために」、そして「国民の自由と人権を守るために」、「法学を学び法の実践にあたる」、と『法学入門』は説く。しかも、「虚偽を退け、不正をにくみ、人間を愛するがゆえに、法学を学ぶ」とまで説く。
本当に法学は、そういうものなのだろうか。法学入門が説くことは、とてつもなく崇高だし、そうありたい。でも、実際は違う、と僕は思う。現実に言えば、法は自分が、ないし個人が、自分の利益を最大化するために道具として使った結果として、何らかの社会的な効用等が生じているだけ。官僚は、法令を作るとき崇高な理念を持っていても、国会での(国会議員の)合意を取り付けるためにそのまま理念を具体化できるわけでもないし、われわれはその理念どおりに法令を駆使するわけでもない。もし、法学がそういう理念どおりに行動すべきだと教えるなら、本末転倒な気もする。
法学は自分のため、個人のためにある。そこからスタートしなおした方がよいのではないか。