今学期は、あっという間に時間が過ぎていきます。ゼミをしていても、講義をしていても、時間が足りないなって思います。そのくらいがちょうどよい、はずですけどね(笑)。それなりに忙しい、そういうことですもんね。
法学部では、覚えたルールに事実を当てはめて、答えを出し、その結果をひたすら覚えることばかりやってきました。その結果として、法学部の学生だと自分の意見をぜんぜん言えなくなり、法律を学ぶことに面白さを感じる機会はほとんどなくなりつつあります。就職してから、上が右といえば右、左といえば左、下といえば下、それをただロボットのように実行していればずっと、安定的に退職まで給料をもらえる時代の法律学は、それでもよかったのかもしれません。
今の時代、たぶんですが、上に従っていたり、長いものに巻かれていたり、とりあえず世間一般的な意見を唱えていれば安全、ということはなくなってきているように思います。何を言っても、何をしても非難されるし(笑)、上に従っていても懲戒されたり、逮捕されたり。例を挙げたら枚挙にいとまがないくらい。こんな時代の法学部の講義やゼミでは、何をどうやって学ぶべきなのか。答えはなかなか見つかりませんね。
僕は、新しい「価値」を生み出せるような勉強が大事なのかな、と思っています。教科書や論文を読むのは大事です。暗記も少しは必要でしょう。でも、そこに新しい価値はない。みなさんがない知識を得ることはできますが、既存の価値が反映されたものを読み、暗記し、それをそのままアウトプットしていたら、既存の価値を再生産する道具になるだけです。それはある意味、凄く楽で、何も考えなくて済みますね。読む時間だけ、暗記する時間だけあればいいのですから。ただ、そもそもぜんぜん面白くないし(笑)、将来、あまり使えません。少なくとも、過去の知識は、そのままでは現実の世界ではほとんど使い物にならない。
新しい価値を生み出すには、皆の常識、通説判例を批判的に眺められる能力がどうしても必要です。たとえば、皆が正しいと思っているけど、この場面では明らかに変だ、とか、誰も疑問に思っていないけど、このまま発展した先には何か別の問題が潜んでいるから事前に対応しておくべきじゃないか、とか。そういう鋭敏な感覚が必要なのです。そのうえで、じゃあどうやって改善するのか、そのときに使える道具は何か、企業なら何を予想してどこまでの対応を行い、残りを政府に委ねる(ないし頼む)のか、などなど、未来を変えていく思考と行動をすればいい。
今のままでいいと思ったら最後で、決して今のままではいられない(笑)。世界は、そして万物は常に流転しているからです。企業や国家は、一応、法的には永続的な存在です。特別な事態がなければ、永続的に存在しえます。でも、変わらなければ、きっと衰退していくでしょう。最後は、構成員が誰もいなくなってしまうかもしれない。上司がよく言うように、日本の政府だって改革は続けているけど、世界の改革スピードには追いつけていないし、そもそも世界自体が変わってしまえば、計画している政策の効果は当然変わってしまいます。予想よりも効果が出ない、効果が出ないどころか悪影響が出る、そんなことだってありうるでしょう。ゼミも同じです。今が最高なら、その先を目指さないと、この先は廃れるだけです。
僕が考えるこの先は、ディベートというより、クライアントを意識したプレゼンやソリューションの発見ですかね。法理論的に答えを見つけられるようにはなってきていますが、クライアントの立場から眺めたら、最善には見えないものが多いし、若干現実離れした案もある。クライアントの最善の利益を考えつつ、現実離れしていない案を突き詰めていくと、敵でも味方でも似たような案に近づいてきます。そこでこそ、どこがクライアントにとって最重要な価値なのかを考えられるはずなんです。
ゼミも残すはあと少しです。4年生は卒論を中心に、毎回、実務よりの問題を扱っています。3年生は、時事問題にメスを入れて、自分たちなりの改善策を考えています。自分たちなりに、今の先を考えてみてください。新しい価値を見出せないと、ゼミでは意味ないと思うので。