約束は破られる。もちろん、破りたくて結ぶ約束はないですけど、必要に応じてやむを得ない事情で破られる約束はたくさんあります。民法、契約法ではなかなか教わらないお話ですね。
民法や契約法を教えている先生方の中で、契約を破られる経験をしたことがある人は限られているでしょう。僕は、実は破られたことがあります。結構、ショックです(笑)。破られるかもな、と思って常にビジネスをしていても、やはり嫌なものです。
ビジネスじゃなくて生活の中でも、約束は日常茶飯事で破られます。嘘もつかれる。倫理的にはさておき、本音と建て前の世界では当然、なのかもしれません。
約束が破られるなら、事前に破られた場合を想定して、プランBやCを用意しておけばいいですが、言うは易し。そんなに簡単じゃないんです。破られない約束もありますから、毎回用意していたら、無駄ばかりになる。保険をたくさんかけすぎて、保険料の支払いのせいでお金がなかなか貯まらない、っていうのと同じ世界になります。また、用意すべき「プランB」や「プランC」は、無数にあります。無数の中から、場面に応じて最適な代替案を選べますかね。法学部にいると、現場感覚なしに代替案を用意すればいいんだ、って覚えて終わりになりがち。それでは、現場では使い物にならないです。
(たとえば、半沢直樹で「やられたらやり返す。百倍返しだ」ってありますけど、何をどうやって百倍返しにすれば、組織を守りながら、中長期的に見て自分にとって最高の結果を得られるのか、そういう思考が大事です。やり返して百倍返ししても、一度左遷されたら金融機関では終わりですよね。外に出れば別かもですが。)
倫理的に言えば、約束は守るべきです。走れメロスのように。
ただ、法的に言えば、破られない約束はない。
そう思って生活できたら、世界はぜんぜん違うモノに見えてきます。
破られない約束はない。だからこそ、守られる約束には価値があるのだと。
(A photo taken in Aug. 2018, at Senjōjiki Cirque, Komagane, Nagano, JAPAN)