2016年11月21日月曜日

覚えるのではなく調べて使える法学へーlegal research and writing


授業では提供できないゼミの魅力として、法の使い方を学べる点を挙げることができます。講義では、どうしても教えるべき内容が多いこともあって、教えられたことを覚えて試験で吐き出して終わり、その繰り返しになりがちです。教えてもらった内容をどう使えるのかについてまでは、学べないことがほとんどだと思います。

しかしながら、実際の世界ではそのような知識はまったく使い物になりません。たとえば、せっかく覚えた内容はたった1年で陳腐化することがあります。会社法が好例です。それに、重要判例を覚えてみても、その事案と完全に一致する事案が再び起こることなど、皆無だからです。だからこそ、ゼミでは法(法令、判例、学説など)を覚えるのではなく、むしろ基礎的な事項をヒントにして必要な情報を調べて使えるようなセンス、というか基本的なウィズダムを皆で学びたいのです。

世の中のありとあらゆる事案は、法的な問題と言っても過言ではありません。法の欠缺といわれる領域は確かにありますけど、そのような領域でも、ガイドラインや指針が運用上、重大な影響を及ぼしていることがあります。要するに、どんな問題でも法的な論点が含まれうる、ということです。

ゼミ生には、何か問題が起きたときに、法的な視点ではこの事案をどのように処理できるのか、特に自分のクライアントや自社にとって最善の利益に適うような処理の方針が何かさらっと語れるような、語れないなら調べてメモを書けるような人材になって欲しいです。

法学の面白さは、答えが1つに見えて、実のところぜんぜんそうではないことです。法解釈と事実関係の組み合わせによって、無数の解を導き出すことができます。そのような複数の解が存在する場合に、自分や自分のクライアントの押す解がより正しいことについて説得力のあるメモを書いたり、プレゼンができるのか、それこそ法学で磨くべき能力だと信じてやみません。

プレゼミは半期、本ゼミは約2年しかないですが、その間で可能かなぎり、ゼミ生の法的なセンスを磨き上げられたらと思っています。


  Photo taken at a hotel located in Singapore, in 2016