今のままでは法学部に未来はない、そう思います。法科大学院ができて、法曹養成の機能がそちらに大幅にシフトし、予備試験対策には予備校通いがベターである以上、法学部が生きる道は限られています。公務員対策をするとか、資格試験を受けさせるとかはどこの大学でもしてるかもしれませんが、法学部の将来像については、実のところあまり真面目に議論されていません(笑)。法学部に入ってくれた学生の皆さんには、少なくとも僕のゼミに入ってくれた学生には、法学部生である意味を最大限に享受して貰いたい、そう思ってここに書いてみます。
大学の法学部にどんな価値があるでしょう?大学の法学部で法律を学んでも、資格はまったく得られません。法律の知識を得られる、しかも一般の人よりはマシな程度に、それが現実です。また、○○大学法学部卒という肩書きだけで企業に入って活躍できる時代はもうとうの昔に終わっています。たとえ入社できても、先はそんなに甘くないです(笑)。偏差値が他学部より高いとか、頭がいいイメージとかどうでもよくて、法学部の価値ってそんなものです。
法学部の価値は、この世の中にあるありとあらゆるルールを最大限に活用して、自分や自分が所属する機関に最大の利益をもたらすような能力を身につけさせることにある、と思います。リーガルマインドとか、横文字はさて置き、それはどんな世界でも、資格に関係なく活用できます。ルールのない世界はこの世にはなく、例外のないルールはないのですから(笑)。
この世界では、ルールがいつでもどこでもはびこっています。ルールのない世界はない、と思います。「存在しない」ことの証明は「悪魔の証明」で絶対に不可能ですけど、おおよそどんな世界にも何かしかのルールはあるはずです。憲法だろうが条約だろうが、法令、条例、ガイドラインだろうが、社内規定だろうがサークルなどのグループ規約だろうが、全部「ルール」です。ルールがある限り、その解釈が問題になり、解釈次第である案件の結論に大きな影響が出ます。皆さんは、解釈を駆使して自分や自分の周りの人に利益をもたらすことができますか?
法学は言葉を駆使する学問ですが、大事なのはルールに基づいて言葉を駆使する点です。法学ではただ言葉を使うのではなく、ルールに照らして使うのです。なければ作ってもいいし、悪いルールなら変えてしまった方がいいかもしれない。ルールの周りで誰よりも言葉を大事にして、相手を説得する能力を発揮する、それが法学部生の強みだと僕は考えています。
法科大学院に入らなくても、ルールを使いこなす術は学べます。そう、ここ法学部でです。法曹になろうが、公務員になろうが、企業に行こうが全員、ルールを使いこなす術なしには生き残れません。もっと正確に言えば、活躍はできないでしょう。
僕は、ゼミ生の皆さんと新しい法学部の価値を見つけたいと思っています。僕が使うのは医療分野の法律問題ですけど、それはただの一例。どんな問題にも応用できるような頭の使い方を、皆でぜひ学んでみませんか?