2020年5月11日月曜日

授業ではエッセンスだけ聞き取る!

オンライン授業は、相当負担が大きいですね。とくに、大学によってはリアルタイム型でも課題を組み合わせることが必須となっており、ソクラテスメソッドで授業する身としては二重に苦しいです(笑)。

僕の授業にはたぶん、合う人と合わない人がいて、要領のいいヒトは毎回、良い成績を取っている印象があります。大事なことだけ覚えていて、それを使って問題を解くだけだから。まあ、他の講義とは違いますよね。エッセンスだけでいいんです。頭いいとかあんまり関係ない。聞き取って覚えるのはエッセンスだけ。雑談も、究極のところエッセンスを覚えるのに繋がると思うから話すだけ。純粋に楽しいから話すことなんてないです。これはマジ。

問題は、エッセンスがどこにあるのか、ですよね。
ワンスライド、ワンメッセージは基本ですけど、授業のテーマは1つで、必ず分かってほしいことを明確に、何度も繰り返し話しています。

エッセンスがどこにあるのか、それだけは大事にして授業を受けてみてください。





2020年5月5日火曜日

個人情報の流出に関する使用者責任 by UK Supreme Court

最近、英国の最高裁で個人情報の流出に関する判決が下されました。日本の研究者や実務家が期待する結論とは真逆。予測が当たったかどうかより、やはり、判例法って面白いです。原審と第一審で責任が認められていたのに、最高裁でひっくり返る。そして、最高裁の方がこれまでの判例法理からすれば当然の大きな流れ。なぜなら、故意による不法行為(本件では犯罪行為)に関する使用者責任は限定的に捉えるのが原則だから。個人情報の流出だから特別に責任が認められる、とはならなかったわけです。残念なのは、最高裁が損害論には踏み込まなかったこと(踏み込むまでもなかったんだろうとは思います)。

※グーグルの事件では、控訴院が損害を認めているみたいで、本件を含めて控訴院までは実損なしの損害を認める方向なのでしょうね(一審で否定されていたので、安心してたらひっくり返ってました)。額の算定の問題にはまだ一度も踏み込んでないのは、あまり指摘されていませんが。参考として、GDPR違反、制裁金よりも怖い代表訴訟と巨額賠償, available at https://blog.bizrisk.iij.jp/401

ちなみに日本では、損害賠償額がいくらか(ゼロも含めて)でもめています。最近の判例では、使用者責任の成立自体はほとんど問題にされていないはず。

UK Supreme Court Rules Morrisons Not Vicariously Liable for Malicious Data Breach by Employee by Sidley Austin LLP, available at https://www.sidley.com/ja/insights/newsupdates/2020/04/uk-supreme-court-rules-morrisons-not-vicariously-liable-for-malicious-data-breach-by-employee

WM Morrison Supermarkets plc v Various Claimants [2020] UKSC 12, available at https://www.supremecourt.uk/cases/docs/uksc-2018-0213-judgment.pdf



麒麟は来ない?ーいや、たぶん来る

麒麟が来る、面白いですね。平らかな世が来るといいですね。
でも、人任せにしていても麒麟は来ない。それを痛感しています。ドラマを見ながら。

何のために法学部にいて、法律を学ぶ?麒麟を招くためじゃない。自分のために学びます。当然そう。自分のために法律を使えないヒトは、みんなのために、誰かのために使えるわけないでしょ

第一回目のゼミ、プレゼミを終えました。プレゼミ生や、はじめて僕のゼミを体験する3年生にとっては、驚きかもしれない。別に判例や学説の勉強をするわけじゃないから。生の事件を僕らなりに斬る。初めて経験する人もいるはず。僕は、アメリカのロースクールで体験しました。衝撃でした。暗記じゃない、生の学問がそこにあったから、凄く面白かったのを今でも覚えています。

1時間半の時間、グループごとに必死に考えてプレゼンに落とし込んでみる。時間足りないとかありえない。長すぎるくらい。危機は待ってくれないし、一瞬一瞬が勝負。そういう訓練を15回したら、就活の面接は怖くなくなる。自分らしい内容でプレゼンし、相手と話せるようになる。僕にとっての「麒麟」はそれかな。それで皆の夢が叶えば一番いい。仮に叶わなくても、夢に近づく助けになれればそれだけでいい。

楽しい法学って何だろう。僕にとっては武器になる、役に立つ法学だと信じて止まない。正義はたくさんあるから、どの正義でも実現できるような腕を、知性を身に着けてほしい。そこに大学は関係ないのだから。

(A photo taken at Ginza area, where few person existed in May 2020)

2020年5月3日日曜日

法律は生々しい学問ー形式や表面的な当てはめは危険?

ようやく、青学での講義が始まりますね。もう、待ちくたびれた感じがしてます。ほかの大学では講義、スタートしていますし、あまりトラブルとかないので(笑)。

オンライン授業していて、感じているのは、法律問題を形式的に、表面的に捉えている人が多いことです。駄目っていうのじゃなく、それだと法学部じゃなくてもいいよなって、悲しく思うんですよ。

法律はルールで、ルールは言葉からできている。だから、言葉のパズルで結論は出ます。人によって、時代によって法解釈は変わりうるけど、まあ、パズルです。要件を満たせば効果が生じるだけなので。ただ、皆、その先を考えなくなっている。暗記するだけになっているんです。この結論で本当に良いのか、自分の身の回りで同じことが起きても納得できるのかどうか、結論を変えるにはどんな法解釈が必要か、それで誰かに不都合は生じないのか、そこまで考えないと、ただのパズルゲームになってしまう。パズルゲームでよいなら、数字をいじる経済学部や経営学部でもできます。文学部でも教育学部でもできるでしょう。理系の学部にもたぶんできます。でも、単なるパズルじゃない。人生を、社会を大きく変えるパズルなんです。

僕は、結論を予測できるようになってほしいんじゃなくて、そのパズルを自分なりに自由自在に解き、答えが不適切なら変えるために何をすべきか分かる人になってほしい。それは、少しかっこよく言えば、自分なりの「正義」を実現できるようになるってこと。変なものは変、よいものはよいって言えるようになるってこと。

ドラマ「BG」のセリフでいうなら、法を破っても依頼人を守るっていう前に、できる限り法を破らないで依頼人を守り、最悪の場合、緊急避難として依頼人を守るって感じかな(笑)。最初から、法を破りたい人はいないから。

医療では人が死んだり、負傷したり、後遺症が残ったり、副作用で苦しんだり、そんな人の事件を扱います。他人事じゃなくて、自分にもいつ、降りかかるかわからない出来事です。メスは握らない、診察も治療もしないけど、メスで切られたり、診察や治療を受けない人はいないでしょう。薬を飲まない人、体温計などの医療機器を使わない人もいないんです。身近な世界でありながら、リスクは大きい。そのリスクに背を向けたら、病気で死んでしまうかもしれない。それが医療の世界。法学部で扱う、自分が一生で一度も出会わないような話じゃなく、必ず遭遇するかもしれない事件を扱い続けます。見たくない世界も見ます。信じたくない世界も知ります。生々しいんです。要は。

生々しい現実を踏まえて、僕らは議論し、現実を変えたければ変える術を考え、行動する。そこまでできて法学部なんじゃないかな。ルールを形式的、表面的に語るのは誰でも出来ちゃう。法学部じゃなくても可能だよ。

僕は事件から入るのが好きだな。ルールから学ぶ前に、事件から入り、そのあとに関連するルールを調べる方がいい。そうしないと、形式的に、表面的に事実をルールに当てはめたり、答えを出しちゃうから。あとは、裁判官みたいに事件を眺めるんじゃなく、どちらかの当事者の側から事件を眺める。そうすると、いろいろと見えてきますよ。

ちなみに、もし、ある事実をルールに当てはめたら、目の前のヒトだけじゃなく100名が負傷ないし死亡しても仕方ないっていう結論が導かれたら、どう思います?多くの法学部生は、「仕方ないですね」って言うんじゃないかな。僕は、「?」思うけどね。